Belgium Architecture
4/13(火)
今日のパブリックレクチャのゲストはベルギー・アントワープの若手建築家グループHuiswerk Architectenの主要メンバーであるDirk Somers。
ベルラーヘに来てから、オランダの隣国ベルギーの建築家や建築作品に触れる機会が多い。今日もそうだが、そんなベルギー建築に触れる度に同じような感覚を覚える。現代ベルギー建築に見られる幾つか共通点を通じて、彼ら独特の建築感や美意識について考えてみた。
* * *
ベルギー・ミニマリズム
オランダのカラフルで油っぽくかつ荒っぽい建築に比べると、ベルギーの建築はとても静かだ。どこまでが建築家の仕事でどこまでが既存の状況なのかが解らないものが多い。建築家が何をデザインしたのだろうか、と一瞬疑いたくなるような静かさだ。
この違いは彼らの都市に対する意識の違いから生まれて来るのだと思う。
オランダ人にとって都市とは社会的な実験の場である。オランダ人は湿地を開拓して都市をゼロから創造した。そのため建築は社会を形成する上でとても重要なツールであったし、今でも同様の意識が根本にある。
一方ベルギー人にとって都市とは過去から受け継ぐ誇るべき遺産である。ブリュッセルやアントワープは、かつてヨーロッパそして世界の資本の中心地として繁栄し豊かで成熟した文化をもつ都市である。そんな都市を誇る意識が根本にある。
ベルギー人にとって建築とは新たな必要性が生まれた場合に行う必要最小限の介入なのではないだろうか。その証拠に彼らは既存の建物、隣の外壁等を、新しく付け加える材料同様に丁寧に扱う。新しさと古さに大きな違いを見出さない。その為どこまでが建築家の仕事でどこまでが元の状態だったかがわからない作品が多い。
都市文化に対する誇り、最小限で静かな介入がベルギー建築のミニマリズムの基本である。
* * *
マグリッド・アーキテクチャ
いつもベルギー建築を見た際に「普通だがなにかがおかしい」という違和感を感じる。この違和感は決して悪い意味ではない。その違和感はルネ・マグリットの作品を見たときにも感じるものに近い。
マグリットは写実的で伝統的な表現手法を用いて日常的なモチーフを使うのだが、何か見る者を戸惑わせる現象を表現している。マグリットは自身の絵画について「世界が本来持っている不思議を可視化している」とも言っている。
例えば、昼と夜という異なる時間が一つの絵の中に表現されていたり、大きなものや小さなものという異なるスケールが同じ空間に共存している。さらには、人体の一部に木目がある等、人体と動植物の混合も見られる。これは美術用語でデペイズマンというらしい。
ベルギー人建築家は、イギリスやドイツ建築の様な、最先端の技術を丸出しにした表現を好まない。彼らはむしろレンガやブロック、石といった普通の材料を好む。そして既存の都市空間に普通の材料を持って少しだけ何かが異なる現象をつくる。上手くいった作品では、そこに潜む小さな違いによって大きな批判的な意味を表現している。
これはとてもマグリット的な方法だと思う。20世紀前半に活躍したマグリットの影響が半世紀の時を経て、現代のベルギー人建築家に大きく受け継がれている。
* * *
メディアにもてはやされるような派手さは無いけれど、何度か触れているとだんだん癖になるような不思議な魅力があり僕自身はベルギー建築に大きな共感を覚える。
成熟した都市文化を誇りながら、大声で騒ぎ立てるような建築に走る事はしない。そして静かだけれど単なる日常に陥ることのない、少しだけ何かが違う建築をベルギー人は生み出している。
今日のパブリックレクチャのゲストはベルギー・アントワープの若手建築家グループHuiswerk Architectenの主要メンバーであるDirk Somers。
ベルラーヘに来てから、オランダの隣国ベルギーの建築家や建築作品に触れる機会が多い。今日もそうだが、そんなベルギー建築に触れる度に同じような感覚を覚える。現代ベルギー建築に見られる幾つか共通点を通じて、彼ら独特の建築感や美意識について考えてみた。
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ベルギー・ミニマリズム
オランダのカラフルで油っぽくかつ荒っぽい建築に比べると、ベルギーの建築はとても静かだ。どこまでが建築家の仕事でどこまでが既存の状況なのかが解らないものが多い。建築家が何をデザインしたのだろうか、と一瞬疑いたくなるような静かさだ。
この違いは彼らの都市に対する意識の違いから生まれて来るのだと思う。
オランダ人にとって都市とは社会的な実験の場である。オランダ人は湿地を開拓して都市をゼロから創造した。そのため建築は社会を形成する上でとても重要なツールであったし、今でも同様の意識が根本にある。
一方ベルギー人にとって都市とは過去から受け継ぐ誇るべき遺産である。ブリュッセルやアントワープは、かつてヨーロッパそして世界の資本の中心地として繁栄し豊かで成熟した文化をもつ都市である。そんな都市を誇る意識が根本にある。
ベルギー人にとって建築とは新たな必要性が生まれた場合に行う必要最小限の介入なのではないだろうか。その証拠に彼らは既存の建物、隣の外壁等を、新しく付け加える材料同様に丁寧に扱う。新しさと古さに大きな違いを見出さない。その為どこまでが建築家の仕事でどこまでが元の状態だったかがわからない作品が多い。
都市文化に対する誇り、最小限で静かな介入がベルギー建築のミニマリズムの基本である。
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マグリッド・アーキテクチャ
いつもベルギー建築を見た際に「普通だがなにかがおかしい」という違和感を感じる。この違和感は決して悪い意味ではない。その違和感はルネ・マグリットの作品を見たときにも感じるものに近い。
マグリットは写実的で伝統的な表現手法を用いて日常的なモチーフを使うのだが、何か見る者を戸惑わせる現象を表現している。マグリットは自身の絵画について「世界が本来持っている不思議を可視化している」とも言っている。
例えば、昼と夜という異なる時間が一つの絵の中に表現されていたり、大きなものや小さなものという異なるスケールが同じ空間に共存している。さらには、人体の一部に木目がある等、人体と動植物の混合も見られる。これは美術用語でデペイズマンというらしい。
ベルギー人建築家は、イギリスやドイツ建築の様な、最先端の技術を丸出しにした表現を好まない。彼らはむしろレンガやブロック、石といった普通の材料を好む。そして既存の都市空間に普通の材料を持って少しだけ何かが異なる現象をつくる。上手くいった作品では、そこに潜む小さな違いによって大きな批判的な意味を表現している。
これはとてもマグリット的な方法だと思う。20世紀前半に活躍したマグリットの影響が半世紀の時を経て、現代のベルギー人建築家に大きく受け継がれている。
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メディアにもてはやされるような派手さは無いけれど、何度か触れているとだんだん癖になるような不思議な魅力があり僕自身はベルギー建築に大きな共感を覚える。
成熟した都市文化を誇りながら、大声で騒ぎ立てるような建築に走る事はしない。そして静かだけれど単なる日常に陥ることのない、少しだけ何かが違う建築をベルギー人は生み出している。
by murakuni75
| 2010-04-15 21:05
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